畭
行政書士
事務所は
>>ホーム >>関連記事 >>一般貨物自動車運送事業 >>Q&A.その2 運送業の開業手続きは
一般貨物Q&A.その2.運送業の開業手続きは
このページでは、一般(又は特定)貨物自動車運送事業を開業するために必要な手続きのうち、一般的なことに
ついて、書いていこうと思います。
Q7.「許可」は運送事業の開業後に受ければよいですか?
A7.「開業前」に受けなければいけません。
前回の記事で、「一般貨物自動車運送事業」と「特定貨物自動車運送事業」を開業するには「許可」が必要であ
ることを書きました。
では、「許可」はいつまでに受けなければならないのかというと、「運送事業を開始するまで」に受けなければ
なりません。
許可を受けないで運送事業を行う行為を、「白トラ行為」ということがありますが、罰則の対象になっています。
許可を受けないで一般貨物自動車運送事業を経営した場合の罰則は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下
の罰金に処し、又はこれを併科する」となっています。
許可を受けないで特定貨物自動車運送事業を経営した場合の罰則は、「1年以下の懲役若しくは150万円以下
の罰金に処し、又はこれを併科する」となっています。
許可を受けずに、現に運送事業を行っている場合は・・・輸送の安全の見地から、早急に許可を受ける手続きを
して頂きたいところです。
Q8.運送を「無償」で行う場合でも、許可を受けなければいけませんか?
A8.運送を常に「無償」で行う場合は貨物自動車運送事業に該当しませんので、許可を受ける必要はありませ
ん。
運送を常に「無償」で行う場合は、運送「事業」ではないので、法律上、「許可を受ける必要がない」とされて
います。
運送事業がメイン事業であれば、常に「無償」ということはあり得ないでしょうが、運送事業がメイン事業に付
帯する事業の場合には、 該当することがあり得ます。
実際に「無償」に該当するかどうかは個別の案件ごとに判断することになると思いますが、私は、運賃の名目で
あるかどうかを問わず、 運賃相当額の費用を受け取っていれば、それは「無償ではない」と判断すべきものと考
えています。
Q9.許可申請をしたいのですが、申請窓口はどこですか?
A9.各都道府県にある「運輸支局」(兵庫県は兵庫陸運部、沖縄県は沖縄総合事務局運輸部)の輸送課・輸送
担当です。
申請書類の提出先であるとともに、手続きについてわからないことがあれば、相談にのって下さいます。
Q10.会社でなければ、許可は受けられないって本当ですか?
A10.個人事業主であっても、許可は受けられます。
「運送事業は会社でなければできない」と誤解されている方がたまにお見えになりますが、個人事業でも会社と
同じように許可は受けられます。
なお、法律的には、人が出生によって誕生するように、会社は設立の登記によって誕生しますが、この設立の登
記をする前であっても、会社が許可の申請をすることは、一応可能とされています。
Q11.これから株式会社を設立して、運送事業の開業の許可申請をしようと考えています。設立にあたり、注
意しておいた方がよいことはありますか?
A11.定款の「目的」に「一般貨物自動車運送事業」を入れておくこと、「取締役」に運送事業に専従する人
で、法令試験を受ける人を入れておきましょう。
会社で運送事業の許可申請をするときは、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書など)と定款のコピーも提出
して、審査を受けることになります。
先に書類の説明をしますが、「登記簿謄本」というのは、会社の名前、住所、役員の名前、資本金の額など、会
社の重要な情報が記載された証明書のことです。
全国の法務局(支局・出張所)で取得することができます(1通600円)。
運送事業の許可申請用に取得するときは、「履歴事項全部証明書」を取得していただければ、間違いありません。
「定款」というのは、登記簿謄本に記載された情報より、もっと細かく会社の決まり事が書いてある書類です。
定款は、法務局では取得できません(一応、過去5年以内に設立登記その他の登記を法務局に申請したことがあ
り、そのときに定款を添付していれば、その「閲覧(コピーは不可。その場で写真撮影は可)」は、申請した法
務局であればできるかもしれません。が、私もやったことがないので詳細は存じ上げません。)。
株式会社を設立したのであれば、公証役場で公証人の認証を受けた定款の謄本(又はそのコピー)がお手元にあ
ると思いますので、これをコピーして(原本証明をして)運輸支局に提出します。
さて、ここからが本題です。
まず、定款の「目的」には「一般貨物自動車運送事業」と入れておきましょう。
まあ、入ってなくても後から入れればいいのですが、その場合は目的の変更登記が必要になってしまい、余計な
お金と手間がかかってしまいます。
はじめから、入れておきましょう。
次に、「取締役」ですが、必ず運送事業に専従する常勤の人を入れて下さい。
その取締役が法令試験を受験し、合格しなければ許可を受けられないことになっています。
目的と同様、こちらも後から入れればいいのですが、その場合は役員の変更登記が必要になってしまい、余計な
お金と手間がかかってしまいます。
はじめから、入れておきましょう。
Q12.定款を紛失してしまいました。どうすればよいですか?
A12.株主の全議決権のうち、3分の2以上(有限会社であれば、株主の半数以上且つ議決権の4分の3以上)
の賛成を得られるのであれば、新しい定款案を作成して、株主総会で定款変更の承認決議をしてしまいま
しょう。
定款を失くしてしまって、どうしようない場合は、設立手続きを依頼した司法書士や行政書士に、当時の定款の
コピーが残っていないか確認して、あればコピーをもらうという手があります。
その定款が最新のものであれば問題ないのですが、定款変更をしている場合は、定款変更を決議した株主総会の
議事録と併せて保管しておき、官公署に定款を提出するときは、定款と株主総会議事録のコピーを併せて提出し
て下さい。
もちろん、株主総会議事録の記載のとおりに、定款そのものを作り直せば、その定款のみを提出すればよいこと
になります。
ただ、このような手続きが面倒であれば、思い切って定款をゼロから丸ごと作り直してしまう手もあります。
株主の議決権の3分の2以上(有限会社の場合は株主の半数以上且つ議決権の4分の3以上)の賛成を得られるの
であれば、全く新しい定款に変更できます。
定款案を会社法に精通している行政書士などの専門家に作成してもらい、それを株主総会で承認する方法が、多
少のお金はかかりますが、楽ですのでおすすめです。
Q13.「法令試験」って運行管理者試験のことですか?
A13.運行管理者試験とは違います。資格試験ではなく、「許可を受けるためだけに受験する試験」です。
法令試験に合格しなければ許可を受けられないことから、法令試験は避けることのできない試練であるといえま
す。
受験者は上に述べた通り「運送業に専従する常勤の取締役(個人事業であれば個人事業主)」ですが、その他の
詳細については以下のとおりです。
試験科目 貨物自動車運送事業法・同法施行規則・輸送安全規則・報告規則
自動車事故報告規則
道路運送法
道路運送車両法
道路交通法
労働基準法
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
労働安全衛生法
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
下請代金支払遅延等防止法
試験日 申請日の翌月以降の奇数月の中旬頃(中部運輸局管轄の場合)
受験機会 最大2回(2回目も不合格の場合は、許可申請が却下になります。通常は却下される前に申請を取下
げて、申請書類を返却してもらいます。)
受験場所 中部運輸局(中部運輸局管轄の場合。静岡県の方も名古屋に受験に来なければいけないので大変で
す。)
試験時間 50分
合格基準 30問のうち、8割以上の正解
私は運行管理者試験は受験したことがありますが、法令試験は受験できませんので、受験した申請者さんからの
伝聞でしか生の情報がありません。
ちなみに、私のお客様は、すべて2回目には合格して下さっていますので、取下げた経験はありません。みなさ
ん、影で努力されていますね。
なお、昔は試験に何でも持ち込めたので、合法的にテキストなどをカンニングできたのですが、これでは試験の
意味がないということで、今では持ち込みが一切禁止になりました。
当日、試験会場で渡される分厚い法令試験条文集のみを見ることができます。
法令試験条文集は、国土交通省のホームページからダウンロードできますので、ぜひ印刷してご活用下さいね。
Q14.今日の記事のソースを教えて下さい。
A14.以下の参照条文をご覧下さい。
このページに書いてあることが「ガセではないか?」と疑われるといけないので、最後に、参照条文をご案内し
ます。
貨物自動車運送事業の許可申請の時期については、貨物自動車運送事業法3条を参照して下さい。
白トラ行為の罰則については、「一般貨物」の場合は同法70条1項に、「特定貨物」の場合は同法71条2項
に書いてあります。
「無償」の場合は、貨物自動車運送事業に該当しないことについては、同法2条2項から4項を参照して下さい。
申請の窓口については、同法4条1項、同法施行規則45条2項を参照して下さい。
設立前の会社による申請の可能性については、同法施行規則3条7項により認められています。
定款の変更については、会社法309条2項11号、(有限会社については会社法の施行に伴う関係法律の整備
等に関する法律14条3項)を参照して下さい。
法令試験の根拠については、貨物自動車運送事業法6条3号を参照して下さい。
(法令試験についての詳細については、中部運輸局の公示(一般貨物自動車運送事業の許可等の申請に係る法令
試験の実施について 平成25年10月23日中運局公示第74号)を参照して下さい。)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
町
の行政書士
事務所です