一般貨物Q&Aその11|運送業の開業にあたり備えるべき要件は(人員編)|

 

 

 

一般貨物Q&A」は、運送業に関する様々なテーマをピックアップして、知識や情報を提供することを目的としたページです。

 

これから開業しようとお考えの方が本ページを読んで、運送業に関する知識を習得していただければ、幸いです。

 



Q27.一般貨物(特定貨物)の許可を受けるには、どういった「人員」を確保する必要がありますか?

 



 

A27.必要となる人員としては

 

 一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従する常勤の取締役又は業務執行社員

 

 個人事業主(個人事業主が許可を申請する場合)

 

 運転者(運転する自動車に対応する運転免許を保有していることが必要です)

 

 運行管理者運行管理者の資格を保有していることが必要です)

 

 整備管理者自動車整備士試験に合格していること又は自動車の整備管理等の実務経験が2年以上あり、かつ整備管理者の選任前研修を修了していることが必要です)

 

が挙げられます。

 

なお、事業用自動車の台数が5台未満の一般廃棄物の運送事業及び霊きゅうの運送事業の場合は、運行管理者及び整備管理者についての例外があります。

 

 

その他の人員としては、必要に応じて

 

 運行管理補助者(運行管理者の運行管理業務を補助する人です。運行管理者の資格を保有していること又は基礎講習を修了していることが必要です)

 

 整備管理補助者(整備管理者の業務を補助する人です。資格等は特に要求されていません)

 

を確保します。

 



Q28.「一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従する常勤の取締役・業務執行社員(会社ではない場合は、個人事業主)」について教えて下さい。

 



 

A28.「 一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従する常勤の取締役・業務執行社員」とは、一般貨物(特定貨物)を経営する会社の常勤の取締役・業務執行社員の中で、一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従する方のことです。

 



 

一般貨物(特定貨物)を「専業」とする会社の取締役や業務執行社員は、自ずと一般貨物(特定貨物)の業務に専従することになりますが、他の事業も「兼業」する会社の取締役や業務執行社員の場合は、一般貨物(特定貨物)以外の兼業事業の方に専従する可能性があります。

 

その結果として、一般貨物(特定貨物)に関する業務については完全に従業員任せで、取締役や業務執行社員は誰一人として日々の運行管理・整備管理に関する指導や監督をしていないという状況に陥ってしまうおそれがあります。

 

このような会社では「輸送の安全を第一」とする一般貨物(特定貨物)の経営を期待することができません。

 

そこで、最低でも会社に常勤する取締役又は業務執行社員のうち1名は、「一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従させなければならないことになっています。

 

なお、この「一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従する常勤の取締役又は業務執行社員」が法令試験を受験し、合格することが、一般貨物(特定貨物)の許可を受けるために必要であることは以前の記事で述べたとおりですが、法令試験が課される理由は、一般貨物(特定貨物)を経営する会社の常勤の取締役又は業務執行社員のうち、一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従する方については、一般貨物(特定貨物)に関係する法令について一定の知識を有していなければ、輸送の安全を第一とする一般貨物(特定貨物)の経営などできないだろうと考えられているからです。

 


 

取締役」と「業務執行社員」について、少し補足をさせていただきます。
  
取締役」とは株式会社及び有限会社における業務を執行する役員のことです。
 
業務執行社員」とは持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)における業務を執行する役員のことです。

 

「業務を執行する」とは、会社に関する様々な「事務」をすることをいいます。

 

つまり、会社に関する様々な事務を処理する権限は、取締役や業務執行社員にあります。

 

通常、取締役や業務執行社員以外に、従業員も事務を処理しますが、これは本来であれば取締役や業務執行社員に権限がある事務の処理を、従業員に行わせているということです。

 

つぎに、「常勤の取締役・業務執行社員」とありますが、「常勤」には法律的な定義はないと思われます。

 

ただ、常識的に考えて、「他の従業員と同じように、原則として毎日決まった時間に出社して、一般貨物(特定貨物)の経営に関する業務を行う取締役・業務執行社員」であれば、ここでいう「常勤の取締役・業務執行社員」といえるものと考えられます。

 


役員の法令遵守に関する公示


 

中運局公示第277号公示

一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の申請事案の処理方針について

一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の申請事案については、その迅速かつ適切な処理を図るため、審査項目及びその適合基準に関する処理方針を下記のとおり定めたので公示する。

A.許可(法第3条・第35条第1項)

許可の申請事案に対する審査は、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)第6条第1項又は同法第35条第3項に規定する許可基準に基づき、厳正かつ公平に行うが、特に次の項目については、それぞれの適合基準により審査する。
なお、審査にあたっては、事実関係を確認するための書類の提出を求めることとする。

Ⅰ.一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送を除く。)

審査項目適合基準

7.法令遵守
申請者又はその法人の役員は、貨物自動車運送事業の遂行に必要な法令
知識を有し、かつ、その法令を遵守すること

 



Q29.当社は、一般貨物(特定貨物)の許可を申請するにあたり、運送業界で就労していた従業員の「Aさん」を「一般貨物(特定貨物)に関する業務に専従する取締役」にしようと考えています。「Aさん」を取締役にするためには、どのような手続きが必要になりますか。

 



 

A29.まずは、取締役候補者である「Aさん」に「 欠格事由」がないかどうかを確認して下さい。

 

欠格事由がなければ、

 

❶(臨時)株主総会の招集の通知

❷株主総会の開催

❸Aさんを取締役に選任する議案を株主の賛成により可決

❹Aさんが取締役への就任を承諾

❺役員変更の登記申請 

 

の流れで、手続をして頂くことになります。

 



 

取締役に関する「欠格事由」には「 取締役の欠格事由」と「 一般貨物(特定貨物)の許可の欠格事由」があります。

 

 取締役の欠格事由」に該当する方は、そもそも取締役になれません

 

一般貨物(特定貨物)の許可の欠格事由」に該当する取締役(顧問、相談役など、事業の経営に関与し、実質的に影響力を及ぼす者を含みます)がいる場合は、その会社は一般貨物(特定貨物)の許可を受けることができません

 

つまり、一般貨物(特定貨物)を経営する場合は、これらの欠格事由に該当する方を取締役にすることはできませんので、まずは取締役候補者の方の欠格事由の有無を確認する必要があります

 

なお、私が今まで業務として携わってきたご依頼人様で、取締役等が欠格事由に該当した経験はほとんどないのですが、欠格事由に該当する場合は許可を受けられませんので、欠格事由に該当するか否かの確認は大変重要なことです。

 

ご面倒かとは存じますが、取締役等の選任の手続の前に事前に確認して頂きますよう、お願い致します。

 



取締役の欠格事由


 

以下①~の欠格事由に該当する人は、取締役にはなれません(取締役に選任しても法律上は「無効」となります)

 

①~は実務上、ほとんど該当することがないと思いますがには稀に該当する方がみえます。

 

取締役の欠格事由に関しては、ここ5年ほどの間に、犯罪を犯したことがない方や刑務所などの刑事施設に入っていたことがない方及び成年後見や保佐の開始の審判を家庭裁判所で受けていない方については、一般的に①~④」の欠格事由には該当しないものと考えられます

 

取締役又は取締役候補者の方で、ここ5年ほどの間に犯罪を犯したことがある方や刑務所などの刑事施設に入っていたことがある方については、

 

1.いつごろにどのような犯罪を犯したのか

2.いつごろにどのような刑罰を受けたのか

3.執行猶予はついたのか

4.執行猶予がついた場合、猶予期間は満了しているかどうか

 

を確認して下さい。

 

執行猶予がついた場合で、猶予期間がすでに満了している場合は、及びには該当しません。

 


①法人


 

「法人」とは、「会社」や「社団法人」、「財団法人」などの「観念的な法的人格」のことです。

 

法人は、取締役にはなれません。

 

取締役になれるのは、人間人間のことを「自然人」といいます)のみです

 

 

会社法第331条
 
(取締役の資格等)
 
次に掲げる者は、取締役となることができない。
 
一 法人

 


②成年被後見人、被保佐人、外国の法令上、これらと同様に取り扱われている者


 

成年被後見人、被保佐人とは、認知症などの精神上の障害により、物事の判断能力が著しく低下している方のうち、家庭裁判所から後見開始の審判」や「保佐開始の審判を受けた方のことで、これらの方には成年後見人保佐人といった代理人(法定代理人といいます)が付され、法定代理人が本人に代わって、お金の管理や契約事務などを行います。

 

成年被後見人や被保佐人は、取締役になることができません

 

成年被後見人や被保佐人は、法務局で「成年後見登記」というかたちで登録がされています。

 

したがって、成年被後見人や被保佐人ではない人は、法務局で「登記されていないことの証明書」という、成年後見登記がされていないことを証明する書類を取得することで、自分が成年被後見人や被保佐人ではないことを証明することができます。

 

なお、建設業の許可などと異なり、一般貨物(特定貨物)の許可の申請においては、「登記されていないことの証明書」を提出する必要はありません。

 

会社法第331条
 
(取締役の資格等)
 
次に掲げる者は、取締役となることができない。
 
二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者

 


③会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法の一定の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者


 

上記7つの法律に規定されている罪のうち、「一定の罪」を犯した場合に、欠格事由に該当することがあります。

 

刑に処せられ」とは、「刑に処する判決が確定したこと」をいいます。

 

執行を受けることがなくなった」とは、「刑の言い渡しを受けたが、「時効」や「恩赦」などによって刑の執行が免除されたこと」をいいます。

 

つまり、「刑に処せられ、その執行を終わった日から2年を経過しない者」というのは、「刑に処する判決が確定し、刑の執行を受けた人で、刑の執行が終わった日から2年間経過していない方」のことです。

 

また、「刑に処せられ、その執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者」というのは「刑に処する判決が確定したが、刑の執行が免除された人で、刑の執行が免除された日から2年間経過していない方」ということです。

 

ちなみに、執行の免除と似た言葉で、「執行猶予」というものがありますが、こちらは取扱いが異なります。

 

執行猶予を受けた場合は、猶予期間が満了すれば刑の言渡しが効力が失います」ので、「執行猶予期間の満了日の翌日から、取締役になることができます」。

 

会社法第331条
 
(取締役の資格等)
 
次に掲げる者は、取締役となることができない。
 
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第百九十七条、第百九十七条の二第一号から第十号の三まで若しくは第十三号から第十五号まで、第百九十八条第八号、第百九十九条、第二百条第一号から第十二号の二まで、第二十号若しくは第二十一号、第二百三条第三項若しくは第二百五条第一号から第六号まで、第十九号若しくは第二十号の罪、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百五十五条第二百五十六条第二百五十八条から第二百六十条まで若しくは第二百六十二条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)第六十五条第六十六条第六十八条若しくは第六十九条の罪、会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二百六十六条、第二百六十七条、第二百六十九条から第二百七十一条まで若しくは第二百七十三条の罪若しくは破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条、第二百六十六条、第二百六十八条から第二百七十二条まで若しくは第二百七十四条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者

 


④③以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)


 

で述べた7つの法律以外の法令の規定に違反し、それにより刑に処せされた人で、その刑が「禁錮」、「懲役」、「死刑」である場合、その人は刑の執行を終わるまで又は刑の執行を受けることがなくなる(≒刑の執行が免除される)までの間は、取締役にはなれません。

 

なおの場合と異なり、

(1)受けた刑が禁錮より重い場合に限り、欠格事由となります。

(2)欠格期間に「2年間」の延長がありません。              

(3)執行猶予期間中の方でも欠格事由に該当しません。

 
 
会社法第331条
 
(取締役の資格等)
 
次に掲げる者は、取締役となることができない。
 
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
 
行政による制裁の種類

 

法令違反をした場合、違反者に対して何かしらの「  行政による制裁ペナルティ) 」が課されることがありますが、この制裁のすべてが「  刑罰 」というわけではありません。

 

日本の刑罰には、重い方から順に「死刑・懲役・禁固・罰金・拘留・科料」とあります。

 

死刑は人の生命を奪うことから生命刑、懲役、禁固、拘留は人の自由を奪う(一定期間刑事施設に収容されます)ことから自由刑、罰金と科料は人の財産を奪うことから財産刑といわれます。

 

取締役の欠格事由としては、行政による制裁のうち、「  刑罰をうけたことがあるか 」が問われますので、上記6つの刑罰を過去に受けているかどうかを確認して下さい

 

なお、財産刑である「罰金・科料」と似たような制裁に「過料」というものがあります。

 

行政にお金を奪われる点では刑罰である罰金・科料と刑罰ではない過料も同じですが、刑罰は「犯罪」に対する制裁ですが、過料は「犯罪を犯したわけではないが、果たすべき義務を怠った」事に対する簡易的な制裁で、過料を受けただけでは欠格事由には該当しません

 

また、過料には犯罪と刑罰について定めた「刑法」や刑事手続きについて定めた「刑事訴訟法」の適用がありません。

 

法令の規定上は、罰金の場合は「罰金に処する」、科料の場合は「科料に処する」、過料の場合は「過料に処する」と使い分けがされています。

 

ちなみに、一般貨物(特定貨物)の許可の取消も行政による制裁の一種ですが、刑罰ではありません。

 


持分会社の業務執行社員の欠格事由


 

持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)については、会社法上、社員に欠格事由が定められておらず、社員であることが前提となる業務執行社員についても欠格事由は定められておりません。

 

したがって、取締役とは異なり、成年被後見人、被保佐人、法人であっても業務執行社員になることができます

 

なお、「後見開始の審判を受けたこと」は、社員の法定退社事由となっておりますので、別段の定めがない場合は、社員が後見開始の審判を受けると社員の地位を失うことになります。

 

会社法第607条
 
(法定退社)
 
社員は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
 後見開始の審判を受けたこと
八 除名
 
2 持分会社は、その社員が前項第5号から第7号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる

 



一般貨物(特定貨物)の許可の欠格事由


 

次に、「 一般貨物(特定貨物)の許可の欠格事由」を列挙します。

 

⑤~のいずれかに該当する場合は、一般貨物(特定貨物)の許可を受けられません。

 

なお、一般貨物(特定貨物)の許可の欠格事由では、個人事業主、取締役などの会社の役員のほか、会社そのもの及び相談役顧問などの事業の経営に関与し、実質的に影響力を及ぼす者についても、その該当性を検討する必要があります。

 


 
1年以上の懲役又は禁固の刑に処せられその執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
 

 

刑に処せられる根拠となった法令がどのような法令かは問われません。

 

に該当する個人事業主や、に該当する会社の役員がいる会社は、期間が経過するまでは一般貨物(特定貨物)の許可が受けられません。

 
 
貨物自動車運送事業法第5条
 
(欠格事由)
 
次の各号のいずれかに該当する者は、第3条の許可を受けることができない。
 
一 一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
 
四 法人であって、その役員のうちに前三号のいずれかに該当する者のあるもの

 


 
個人事業主として一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消を受け、その取消の日から2年を経過しない者
 

 

過去に個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を受けて運送事業を経営していた方が、法令違反によりその許可を取り消された場合、取消の日から2年間は、再度の許可を受けることが制限されています。

 

 この場合、個人事業主としてはもちろん、自身が取締役に就任している会社も、期間が経過するまでは一般貨物(特定貨物)の許可が受けられません。

 
 
貨物自動車運送事業法第5条
 
(欠格事由)
 
次の各号のいずれかに該当する者は、第3条の許可を受けることができない。
 
二 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者
 
四 法人であって、その役員のうちに前三号のいずれかに該当する者のあるもの

 


 
法人が一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消を受けた場合で、当該取消に係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員(役員と同等以上の職権又は支配力を有する者を含む)であった者で当該取消の日から2年を経過しないもの
 

 

過去に一般貨物(特定貨物)の許可を受けて一般貨物(特定貨物)を経営していた会社の役員であったが、当該会社が法令違反によりその許可を取り消された場合、取り消された当時、その法人の役員等だった方については、その法人の許可の取消の日から2年間は、個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を受けることができません。

 

 また、自身が取締役に就任している会社も、期間が経過するまでは一般貨物(特定貨物)の許可が受けられません

 

なお、対象となる法人の役員は、許可の取消時点で役員であった方はもちろんのこと、許可の取消に係る聴聞の通知が到達した日から遡さかのぼること60日間の間に、役員であった方も含まれます。

 
 
貨物自動車運送事業法第5条
 
(欠格事由)
 
次の各号のいずれかに該当する者は、第3条の許可を受けることができない。
 
二 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条第一項の通知が到達した日(同条第三項により通知が到達したものとみなされた日を含む。)をいう。)前六十日以内にその法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。第四号において同じ。)であった者で当該取消しの日から二年を経過しないものを含む。)
 
四 法人であって、その役員のうちに前三号のいずれかに該当する者のあるもの

 


 
⑧営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人であって、その法定代理人が⑤~⑦に該当するもの
 

 

この欠格事由は未成年者=2022年3月31日までは20歳未満の者、2022年4月1日からは18歳未満の者や成年被後見人を一般貨物(特定貨物)の許可を申請する会社の役員にしたり、個人事業主にしたりする場合に限り、その法定代理人が該当する可能性があるものですので、ほとんどの方には関係がありません。

 

一応、この欠格事由が関係してくるケースとしては、次のようなものが考えられます。

 

未成年者が取締役をつとめる株式会社又は有限会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合

 

未成年者が業務執行社員をつとめる持分会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合

 

成年被後見人が取締役をつとめる株式会社又は有限会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合

 

❹成年被後見人が業務執行社員をつとめる持分会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合

 

未成年者が個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合

 

❻成年被後見人が個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合

 

 

このうち、の場合に、の法定代理人の欠格事由に該当する可能性があるものと考えられます。

 


 
 
行政機関の許可等が求められる業種は、一般貨物(特定貨物)などの自動車運送事業以外にも、建設業(許可)や宅地建物取引業(免許)、社交飲食店などの風俗営業(許可)等々たくさんありますが、これらの欠格事由の中には、「申請者や役員が成年被後見人であること」が含まれていることが多いように思います。

これに対し、一般貨物(特定貨物)などの自動車運送事業では、「申請者や役員が成年被後見人であること」は欠格事由にはなっておらず、「申請者や役員が成年被後見人であってその法定代理人が欠格事由に該当すること」が欠格事由になっています。

 
 
 

❶未成年者が取締役をつとめる株式会社又は有限会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合について


 

未成年者は①~にある「取締役の欠格事由」に該当しませんので、取締役になることができます。

 

ただし、取締役になるには「法定代理人の同意」が必要とされ(「法定代理人の同意を証する書面」が未成年者の取締役の就任登記の添付書面となっています)、またこの同意は民法第6条第1項の「営業の許可」として扱われます。

 

したがって、通常、「未成年者である取締役」は法定代理人から「営業の許可」を受けているため、「成年者と同一の行為能力を有する未成年者」であり、「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」には該当しないことから、法定代理人の欠格事由を考慮する必要がないものと考えられます。

 

民法
 
(成年)
 
第4条 年齢20歳をもって、成年とする


(未成年者の法律行為)
 
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
 
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる
 
3 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。


(未成年者の営業の許可
 
第6条 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する
 
2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

 


未成年者が業務執行社員をつとめる持分会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合


 

持分会社の業務執行社員については株式会社の取締役のような欠格事由が定められていませんので、未成年者が業務執行社員になることができます。

 

ただし、業務執行社員になるには「法定代理人の同意」が必要とされる点、またこの同意は民法第6条第1項の「営業の許可」として扱われる点は株式会社の取締役の場合と同様の取扱いがされるものと思われます。

 

したがって、通常、「未成年者である業務執行社員」は法定代理人から「営業の許可」を受けた「成年者と同一の行為能力を有する未成年者」であり、「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」には該当しないものと思われ、法定代理人の欠格事由を考慮する必要がないものと考えられます。

 


成年被後見人が取締役をつとめる株式会社又は有限会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合


 

 

成年被後見人はの「取締役の欠格事由」に該当しますので、そもそも取締役になることができません。

 

 


❹成年被後見人が業務執行社員をつとめる持分会社が一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合


 

持分会社の業務執行社員については欠格事由が定められていませんので、成年被後見人が業務執行社員になることが一応できることになります。

 

ただ、成年被後見人が業務執行社員になったとしても、成年被後見人が業務執行をすることはできないものと考えられますので、成年後見人が成年被後見人に代わって業務執行を行うことになるものと考えられます。

 

この取り扱いを悪用して、本来、欠格事由に該当して一般貨物(特定貨物)の許可を申請する持分会社の業務執行社員になれない人が、成年被後見人を「かくれみの」にして、成年被後見人を一般貨物(特定貨物)の許可を申請する持分会社の業務執行社員に就任させ、業務執行社員としての業務を成年後見人が実質的に行うということが可能になってしまうので、そのような脱法的な運用を防止するために、では法定代理人である成年後見人の欠格事由を定めています。

 

したがって、「欠格事由に該当する法定代理人が成年被後見人をかくれみのにするケース」では法定代理人がの欠格事由に該当するため、一般貨物(特定貨物)の許可を受けることはできません。

 

 


未成年者が個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合


 

未成年者が個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を受けるためには、法定代理人の「営業の許可」を受けなければなりませんので、「未成年者である個人事業主」は「成年者と同一の行為能力を有する未成年者」であり、「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」には該当しないことから、法定代理人の欠格事由を考慮する必要がないものと考えられます。

 

商法
 
(定義)
 
第4条 この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
 
2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。


未成年者登記
 
第5条 未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない

 

商業登記法
 
(未成年者登記の登記事項等)
 
第35条 商法第5条の規定による登記において登記すべき事項は、次のとおりとする。
一 未成年者の氏名、出生の年月日及び住所
二 営業の種類
三 営業所
 
2 第29条の規定は、未成年者の登記に準用する。


(申請人)
 
第36条 未成年者の登記は、未成年者の申請によつてする。
 
2 営業の許可の取消しによる消滅の登記又は営業の許可の制限による変更の登記は、法定代理人も申請することができる。
 
3 未成年者の死亡による消滅の登記は、法定代理人の申請によつてする。
 
4 未成年者が成年に達したことによる消滅の登記は、登記官が、職権ですることができる。


添付書面
 
第37条 商法第5条の規定による登記の申請書には、法定代理人の許可を得たことを証する書面を添付しなければならない。ただし、申請書に法定代理人の記名押印があるときは、この限りでない。
 
2 未成年後見人が未成年被後見人の営業を許可した場合において、未成年後見監督人がないときはその旨を証する書面を、未成年後見監督人があるときはその同意を得たことを証する書面を、前項の申請書に添付しなければならない。
 
3 前2項の規定は、営業の種類の増加による変更の登記の申請に準用する。

 


❻成年被後見人が個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を申請する場合


 

成年被後見人が個人事業主として一般貨物(特定貨物)の許可を受ける場合で、で記載したような「欠格事由に該当する法定代理人が成年被後見人をかくれものにするケース」であれば、一般貨物(特定貨物)の許可を受けることができないものと考えられます。

 

もっとも、個人事業主が申請する場合は法令試験を当該個人事業主が受験するため、成年被後見人が申請する場合は当該成年被後見人が受験することになると思われますが、成年被後見人の方で事理弁識能力が回復しているような方を除き、法令試験に合格することは難しいと思われますので、現実的にはのケースは考えにくいです。

 


 
⑨個人事業主として貨物自動車運送事業法、道路運送法違反により、申請日前3か月(悪質な違反については6か月)又は申請日以降に、自動車その他輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者

 

 

⑩法人が貨物自動車運送事業法、道路運送法違反により、申請日前3か月(悪質な違反については6か月)又は申請日以降に、自動車その他輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた場合で、当該処分を受ける原因となった事実が発生した当時、その法人の業務を執行する常勤役員(取締役のほか、相談役・顧問などの事業の経営関与し、実質的に影響力を及ぼす者を含みます)であった者
 

 

については、法律に規定があるものではないのですが、「公示」に記載があり、実質的には欠格事由と同視できますので、ここで取り上げました

 

中運局公示第277号公示

一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の申請事案の処理方針について

一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の申請事案については、その迅速かつ適切な処理を図るため、審査項目及びその適合基準に関する処理方針を下記のとおり定めたので公示する。

A.許可(法第3条・第35条第1項)

許可の申請事案に対する審査は、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)第6条第1項又は同法第35条第3項に規定する許可基準に基づき、厳正かつ公平に行うが、特に次の項目については、それぞれの適合基準により審査する。
なお、審査にあたっては、事実関係を確認するための書類の提出を求めることとする。

Ⅰ.一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送を除く。)

審査項目適合基準

7.法令遵守

申請者申請者が法人である場合にあっては、その法人の業務を執行する常勤の役員いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。」を含む。)が、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)又は道路運送法(昭和26年法律第183号)違反により申請日前3ヶ月悪質な違反については6ヶ月)又は申請日以降に、自動車その他輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者当該処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤役員として在任した者を含む。)ではなく、その旨の宣誓書の提出があること

(ア)申請日前3ヶ月(悪質な違反については6ヶ月)の起算日は、その処分期間終了後とする。

(イ)業務を執行する常勤の役員(いかなる名称を問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)には、相談役、顧問等として事業の経営に関与し、実質的に影響力を及ぼす者を含む。

(ウ)悪質な違反とは

ⅰ 違反事実若しくはこれを証するものを隠滅し、又は隠滅すると疑うに足りる相当の理由が認められる場合。

ⅱ 飲酒運転、ひき逃げ等の悪質な違反行為又は社会的影響のある事故を引き起こした場合。

ⅲ 事業の停止処分の場合。

 


 

さて、設問にもどりまして、以上①~を検討した結果、取締役候補者の方が欠格事由に該当しないことが明らかになったときは、取締役の選任手続を行って下さい。

 

「(臨時)株主総会」を開催して、「Aさん」を取締役に選任する議案について、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数の出席と、出席した株主の議決権の過半数(定款の中で、可決に必要な議決権割合が別途定められている場合はその割合)の賛成が得られれば、「Aさん」は取締役に「選任」されます。

 

会社から取締役に選任された「Aさん」が「取締役に就任することを承諾」すれば、「Aさん」はその就任を承諾した時点で取締役となります

 

以上、社内での手続きが済みましたら、会社の本店の所在地を管轄する法務局に、「Aさんが取締役になりました」という内容の、役員変更の登記申請を行い、完了したら、手続きは終了となります。

 

なお、役員変更の登記申請に必要な書類の案内とその様式については、法務省のホームページからダウンロードできますので、ご自身で作成できそうであればご自身で、ご面倒であればお近くの司法書士にご相談下さい。

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