一般貨物の時事その1|平成31年4月1日標準貨物自動車運送約款の改正について|


 

一般貨物の時事」は、一般貨物自動車運送事業に関する様々な時事テーマをピックアップして、知識や情報を提供することを目的としたページです。

 

本ページを読んで、ご覧のみなさまが現在直面している問題やお悩みが解決すれば、幸いです。

 

なお、参考までに貨物自動車運送事業法などの法令の規定を一部掲載することがございますが、本題から脱線してしまっている個所もございますので、読み飛ばしていただいても構いません。

 



 

今回は、平成31年4月1日改正商法が施行されたことに伴い、同日に改正された標準貨物自動車運送約款について、

 

(1)一体何が変わったのか

(2)このたびの標準貨物自動車運送約款の改正により、運輸支局で何らかの手続きをする必要があるのか

 

について、ご案内申し上げます。

 



Q1.標準貨物自動車運送約款は、平成31年4月1日の改正により、平成29年11月4日改正のもの(以下、「旧標準貨物自動車運送約款」といいます)から、一体何が変わったのですか?

 



 

A1.変更点として主なものは、以下のとおりです。

 



変更点その1


 

荷送人=荷物を送る人が運送人=荷物を運ぶ運送事業者に交付する書類の名称が「運送状」から「送り状」に変わりました。

 

また、「送り状」に荷送人の「署名又は記名押印」をすることが必須ではなくなりました(新標準運送約款第8条)。

 


変更点その2


 

貨物が高価品である場合に、荷送人が貨物の種類及び価額を運送人に通知しなかった場合でも、

 

❶運送契約の締結時に、当該貨物が高価品であることを運送人が知っていたとき

 

❷運送人の故意又は重大な過失によって運送品の滅失、損傷又は延着が生じたとき

 

は、高価品の滅失、損傷、又は延着についての運送人の損害賠償責任が免責されないことになりました(新標準運送約款第45条)。

 


変更点その3


 

運送人の責任が、「荷受人=荷物を受け取る人が貨物を受けとった日から1年を経過したときは、時効によって消滅する」という取扱いだったものから「貨物の引渡しがされた日から1年以内に裁判上の請求がされないときは、除斥期間によって消滅する」という取扱いに変更されました(新標準運送約款第49条第1項)。

 

裁判上の請求とは、民事上の訴えの提起のこと(すなわち裁判所に訴えること)です。

 

除斥期間」となったことにより、時効の援用などの時効制度の適用を受けることがなくなりますので、引渡しがされた日から1年間、何事もなく月日が経過すれば、時効の援用などの手続きを必要とすることなく、当然に運送人の責任が消滅することになりました(ただし、第49条第2項及び第3項に例外があります)。

 


変更点その4


 

危険品の運送を依頼するときに、荷送人が運送人に対して通知しなければならない事項が増えました(新標準運送約款第14条)。

 


変更点その5


 

貨物引換証に関する商法の規定がすべて削除されたことに伴い、旧標準貨物自動車運送約款のうち、「貨物引換証」を前提とした規定が削除(旧運送約款第13条及び第21条)され、また一部規定の文言から削除されました。

 

貨物引換証は、近時は利用されていなかったため、条文として存置しておく必要性に乏しく、削除されました。

 


 

以上が、標準貨物自動車運送約款の平成31年4月1日改正の主な変更点です。

 

新標準貨物自動車運送約款旧標準貨物自動車運送約款の新旧対照表を拝見したく、国土交通省や各地方運輸局のホームページに掲載されていないかweb上で探したのですが、残念ながら見つかりませんでした。

 

標準貨物自動車運送約款のうち、どこが変更になったのか個人的に興味があったので、商法の改正点も交えながら、改正事項をまとめてみました。

 

以下、新標準貨物自動車運送約款を、旧標準貨物自動車運送約款との変更点を確認しながらご覧いただけますので、宜しければご覧下さい。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



Q2.このたびの商法改正及び標準貨物自動車運送約款の改正に関して、運輸支局等で運送約款に関する手続きをする必要がありますか?

 



 

A2.運送事業者様が現在使用している運送約款に、Q1.で述べた「改正後の商法の趣旨を反映させる必要がありますので、場合によっては運送約款の変更の認可を受けるなどの手続きが必要になるケースがあります。

 

平成31年3月31日時点で、運送事業者様が使用している貨物自動車運送約款の内容によって、手続きの要否や種類が決まります。

 

以下に3つのケースに区分してご案内致しますので、各運送事業者様が該当するケースをご確認下さい。

 



 

平成31年3月31日時点で、運送事業者様が使用している貨物自動車運送約款の内容によって、手続きの要否が決まります。

 

なお、以下では改正前と改正後の標準貨物自動車運送約款についてわかりやすくするため、以下のように呼称することとします。

 

平成31年4月1日改正の標準貨物自動車運送約款  ・・・平成31年式の標準貨物自動車運送約

平成29年11月4日改正の標準貨物自動車運送約款 ・・・平成29年式の標準貨物自動車運送約款

平成29年11月4日改正前の標準貨物自動車運送約款・・・平成26年式の標準貨物自動車運送約款

 

平成31年3月31日時点で、運送事業者様が使用している運送約款は、以下(A)~(C)の3つのケースのいずれかに区分することができます。

 

 



(A)平成31年3月31日時点で、平成29年式の標準貨物自動車運送約款を使用しているケース

 

このケースは、平成31年4月1日以降は平成31年式の標準貨物自動車運送約款を使用すればよいので、運輸支局等での手続きは必要ありません貨物自動車運送事業法第10条第3項により、運送約款の認可を受けたものとみなされるからです)。

 

ただし、「平成31年4月1日以降は、独自の運送約款を作成して使用したい」というご希望がある場合は、独自運送約款を作成して、運輸支局等に認可申請を行う必要があります。

 


運送約款に関する参考条文


 

貨物自動車運送事業法第10条
 
(運送約款)
 
一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
 
2 国土交通大臣は、前項の認可をしようとするときは、次に掲げる基準によって、これをしなければならない。
 
一 荷主の正当な利益を害するおそれがないものであること。
 
二 少なくとも運賃及び料金の収受並びに一般貨物自動車運送事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
 
3 国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、一般貨物自動車運送事業者が、標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款については、第一項の規定による認可を受けたものとみなす。
 

第1項では、独自運送約款を使用する場合や、その内容を変更した場合は、国土交通大臣の認可を受けなければならない旨が定められています。

 

第3項では、標準運送約款を使用する場合は、国土交通大臣の認可を受けたものとみなす旨が定められています。

 



(B)平成31年3月31日時点で、平成26年式の標準貨物自動車運送約款を独自運送約款として続用しているケース

 

このケースは、かつて標準貨物自動車運送約款だった平成26年式の標準貨物自動車運送約款が、平成29年11月4日からは標準貨物自動車運送約款ではなくなってしまった(かわって平成29年式の標準貨物自動車運送約款が標準貨物自動車運送約款になりました)ため、平成26年式の標準貨物自動車運送約款を独自運送約款として認可の申請をし、認可を受けて、平成31年3月31日時点で使用しているケースです。

 

平成31年4月1日以降は、平成26年式の標準貨物自動車運送約款を独自運送約款として使用できなくなります(なぜなら、改正後の商法の趣旨を反映していないものだからです)

 

したがって、平成31年4月1日以降に使用する運送約款については、

 

平成31年式の標準貨物自動車運送約款を使用する

 

独自運送約款を作成して使用する(ただし、独自運送約款には、改正後の商法の趣旨を反映させる必要があり、また運送の対価である「運賃」と運送以外の役務等の対価である「料金」を明確化し、別建てで収受できるように規定を設定していただく必要があります)

 

のいずれかを選択していただくことになります(多くの運送事業者様は❶を選択することになると考えられます)。

 


 

の場合は、平成31年式の標準貨物自動車運送約款を使用するにあたり、運輸支局等で運送約款の認可を受ける必要はありません(貨物自動車運送事業法第10条第3項)。

 

しかし、平成31年式の標準貨物自動車運送約款を使用することにより、今後は運送の対価である「運賃」と運送以外の役務等の対価である「料金」を明確化し、別建てで収受できる取扱いになるため、運送の対価と運送以外の役務等の対価を区分して運賃と料金を設定しなおし、その届出を行う必要がありますので、後述する運賃及び料金の変更届の手続きが必要になります

 


 

の場合は、運輸支局にて「独自の貨物自動車運送約款の認可申請」と「運賃及び料金の変更届の手続きが必要になります

 


 

運賃及び料金の変更届」の手続きに必要となる書面の様式は、各運輸局のホームページにある「トラック」の「様式集」や「運送約款」のページから、ダウンロードすることができます。

 

平成11年公示の運賃を使用している運送事業者様は平成11年公示の運賃を使用している運送事業者用の運賃料金設定(変更)届出書を使用していただき、「運賃料金設定(変更)届出書」、「別紙①」、「別紙②」をそれぞれ3部、営業所を管轄する運輸支局等にご提出下さい。

 

平成2年公示の運賃を使用している運送事業者様は平成2年公示の運賃を使用している運送事業者用の運賃料金設定(変更)届出書をダウンロードしていただき、「運賃料金設定(変更)届出書」、「別紙①」、「別紙②」をそれぞれ3部、営業所を管轄する運輸支局等にご提出下さい。

 

別紙①(運賃・料金の額)の【積込料及び取卸料について】及び【待機時間料について】の箇所は運送事業者様に決めていただき、ご記入していただく必要がありますが、別紙②(適用方法)については新・旧があらかじめすべて記載されておりますので、特に問題がないようでしたら、そのままご使用いただけるようになっています。

 

なお、運賃料金設定(変更)届の提出期限は、平成31年5月7日とのことですので、手続きのお忘れのなきよう、宜しくお願い致します。

 

 



(C)平成31年3月31日時点で、運送事業者様独自の運送約款(ただしBに該当する場合を除く)を使用しているケース

 

このケースは、平成29年11月4日の標準貨物自動車運送約款が改正されたタイミングで、運送事業者様が(B)に該当する以外の独自の運送約款を自ら作成し、認可を受けて使用しているケースです。

 

この独自運送約款は、通常、改正後の商法の趣旨を反映していないものと考えられますので、改正後の趣旨を反映させた独自運送約款を作成し、営業所を管轄する運輸支局等に認可の申請をする必要があります(貨物自動車運送事業法第10条第1項)。

 

なお、平成31年3月31日時点で使用している独自運送約款が、運送の対価である「運賃」と運送以外の役務等の対価である「料金」を明確化し、別建てで収受できる取扱いになっており、かつ運送の対価と運送以外の役務等の対価を区分して運賃と料金を設定し、その届出をしているのであれば、平成31年4月1日以降も運賃・料金の額に変更がない限り、「運賃料金設定(変更)届」の手続きは必要ありません。

 



 

運送約款に関する手続きのご案内は以上です。

 

なお、主たる事務所その他営業所内に、現在使用している貨物自動車運送約款を掲示していただく必要がありますので、そちらもお忘れのなきよう、お願いを申し上げます。

 


運送約款の掲示に関する参考条文


 

貨物自動車運送事業法第11条
 
(運賃及び料金等の掲示)
 
一般貨物自動車運送事業者は、運賃及び料金(個人(事業として又は事業のために運送契約の当事者となる場合におけるものを除く。)を対象とするものに限る。)、運送約款その他国土交通省令で定める事項を主たる事務所その他の営業所において公衆に見やすいように掲示しなければならない
 
 


 
 
 

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