一般貨物Q&Aその13|運送業の開業にあたり備えるべき要件は(資金編)|

 

「一般貨物Q&A」は、運送業に関する様々なテーマをピックアップして、知識や情報を提供することを目的としたページです。

 

これから開業しようとお考えの方が本ページを読んで、運送業に関する知識を習得していただければ、幸いです。

 



Q38.許可を受けるにあたり、自己資金に関する審査はありますか?

 



 

A38.特定貨物の許可には審査がありませんが、一般貨物の許可には審査があります。

 



 

これまでのQ&Aでは、一般貨物(特定貨物)を開業するために必要となる「人」及び「物」について説明をして参りました。

 

必要となる「」として、取締役などの業務執行役員、運転者、運行管理者、整備管理者(、運行管理補助者、整備管理補助者)についてご説明を致しました。

 

必要となる「」として、車両(一般廃棄物運送、霊きゅう運送を除き5台以上)、営業所、休憩・睡眠施設、自動車車庫についてご説明致しましたが、そのほかにも、机、椅子、パソコン、電話などの事務用機器のほか、アルコールチェッカーなどが最低限必要になります。

 

ところで、実際に一般貨物を経営するとなると、「役員」については「正式に選任」したうえで「役員報酬」を支払い、「労働者」については「雇用契約を締結」したうえで「賃金」を支払わなければなりません。

 

また、「社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)」及び「労働保険料(雇用保険料と労災保険料)」についても、毎月、会社が負担しなければならない部分があります。

 

「物」についても、「購入」するか、「リース」または「賃借」することによって調達することになりますが、それらの調達資金を会社が負担することになります。

 

このように、一般貨物を経営するためには、必要となる「自己資金」を保有していなければなりません。

 

そこで、許可の申請者が「一般貨物」の許可を受けられたとして、「資金的に経営をしていくことができるのかどうか」を運輸局として審査する必要があり、また申請者はそれを証明する必要があるのです。

 

 



Q39.自己資金に関する審査とは、どのような事項に関して審査をするのですか?

 



 

A39.「自己資金」が「事業開始に要する資金の見積額」以上あるかどうかについて審査されます。

 



 

自己資金」とは、「預貯金の額」のことです。

 

常識的には「現金」も当然「自己資金」となるのですが、一般貨物の許可の要件としての「自己資金」には、「現金」を計上することができません。

 

なぜこのような取扱いをしているかというと、自己資金の額は、書面で証明された客観的に明らかな金額である必要があるからです。

 

そこで、自己資金の額は金融機関が発行する預貯金の残高証明書に記載された金額という取扱いになっています。

 

つぎに、「事業開始に要する資金の見積額」ですが、これは一般貨物の許可の要件としての独自の項目に基づいて計上します。

 

事業に要する資金の見積額に計上する項目は、大きく分けて以下の11項目です。

 


1.人件費


①報酬・給与、手当、賞与


 

一般貨物に従事する「役員の報酬」及び「労働者の給与、手当、賞与」を計上します。

 

具体的には、役員については役員報酬のか月分、労働者については給与、手当のか月分及びか月分の賞与を計上します。

 

*役員報酬は、株式会社であれば事業年度の開始から3か月以内に株主総会でその額を決定し、1事業年度の間、同額とするのが一般的です。

 


②法定福利率


 

①の役員の報酬、労働者の給与、手当及び賞与にかかる健康保険料、厚生年金保険料のうち、事業主負担分を計上します。

 

また、①の労働者の給与、手当及び賞与にかかる雇用保険料及び労災保険料のうち、事業主負担分を計上します。

 

 


③厚生福利費


 

①の労働者の給与、手当、賞与の2%を固定値として計上します。

 

 


2.燃料費


 

月間総走行キロ(km)÷1ℓあたり走行キロ(km)×ℓあたり単価(円)×か月分×事業用自動車の台数

 

の計算式で算出します。

 

 


3.油脂費


 

2.の燃料費の3%を固定値として計上します。

 

 


4.修繕費


①外注修繕費


 

事業用自動車に3ヶ月に1回義務付けられている「定期点検」の費用などを、全車両につきか月分計上します。

 


②タイヤチューブ費


 

チューブレスであれば計上する必要はありません。

 

 


5.車両費


 

①購入(一括払)・・・全額を計上します。

 

②購入(分割払)・・・頭金+1年分の割賦金を計上します。

 

③リース・・・1年分のリース料を計上します。

 

④賃借・・・1年分の賃料を計上します。

 

 


6.施設購入・使用料


 

営業所、休憩・睡眠施設、自動車車庫の土地・建物について

 

①購入(一括払)・・・全額を計上します。

 

②購入(分割払)・・・頭金+1年分の割賦金を計上します。

 

③賃借・・・1年分の賃料を計上します。

 

 


7.什器・備品費


 

取得価格(分割払の場合、割賦未払金も計上)を計上します。

 

 


8.施設賦課税


 

自動車税、自動車重量税の1年分及び自動車取得税を計上します。

 

 


9.保険料


 

自賠責保険、任意保険の1年分を計上します。

 

 


10.登録免許税


 

12万円を計上します。

 

 


11.その他


 

水道光熱費、通信費、広告宣伝費、雑費等の2か月分を計上します。

 

 


 

以上、1.~11.を計上して算出した事業開始に要する資金の見積額以上の自己資金が必要です。

 
 
なお、自己資金の額は、預貯金の残高証明書に記載された金額について運輸局の審査を受けるわけですが、実態のない見せ金によって残高証明書の金額を大きくすることが事実上可能であることから、このような反倫理的な手段による許可の申請を防止するため

 

1回目:申請前2週間以内の日付を基準日とする残高証明書を提出する

 

2回目:申請後、許可を受けるまでの間の期間のうち、運輸支局が指示する期間中の日付を基準日とする残高証明書を提出する

 

という取扱いになっております。
 
 
申請者としては、一般貨物の許可を申請してから許可を受けるまでの間は預貯金の額(=自己資金)が事業開始に要する資金の見積額を下回らないようにしなければならないという認識のもと、申請に臨んで下さい。
 

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