一般貨物Q&Aその4|運送業の開業手続きは(2)|

 

一般貨物Q&A」は、運送業に関する様々なテーマをピックアップして、知識や情報を提供することを目的としたページです。

 

これから開業しようとお考えの方が本ページを読んで、運送業に関する知識を習得していただければ、幸いです。

 

Q9.会社でなければ、許可は受けられないというのは本当ですか?

 



 

A9.いいえ、個人事業主であっても、許可は受けられます。

 



 

一般貨物(特定貨物)自動車運送事業は「個人事業」でも会社と同じように許可を受けられます。

 

なお、会社は設立の登記によって誕生しますが、この設立の登記をする前であっても、許可の申請をすることは可能とされています。

 



許可の申請者に関する参考条文


 

貨物自動車運送事業法施行規則第3条

(添付書類)


法第4条第3項の国土交通省令で定める事項を記載した書類は、次のとおりとする。
一 事業用自動車の運行管理の体制を記載した書類
二 事業の開始に要する資金の総額及びその内訳並びにその資金の調達方法を記載した書類
三 事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類
四 特別積合せ貨物運送をしようとする場合にあっては、次に掲げる書類
イ 事業用自動車の乗務に関する基準を記載した書類(貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成二年運輸省令第二十二号)第三条第八項の規定により定めなければならないこととされている場合に限る。)
ロ 次に掲げる事項を記載した運行系統図(縮尺二十万分の一以上の平面図)
(1) 起点、終点及び経過地の位置
(2) 特別積合せ貨物運送に係る営業所及び荷扱所の名称及び位置
(3) 縮尺及び方位
ハ 積合せ貨物に係る紛失等の事故の防止その他特別積合せ貨物運送の管理の体制を記載した書類
ニ 推定による一年間の取扱貨物の種類及び数量並びにその算出の基礎を記載した書類
五 貨物自動車利用運送を行おうとする場合にあっては、次に掲げる書類
イ 利用する事業者との運送に関する契約書の写し
ロ 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、保管施設の面積、構造及び附属設備を記載した書類

六 
既存の法人にあっては、次に掲げる書類
イ 定款又は寄附行為及び登記事項証明書
ロ 最近の事業年度における貸借対照表
ハ 役員又は社員の名簿及び履歴書

七 法人を設立しようとするものにあっては、次に掲げる書類
イ 定款(会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項及びその準用規定により認証を必要とする場合にあっては、認証のある定款)又は寄附行為の謄本
ロ 発起人、社員又は設立者の名簿及び履歴書
ハ 設立しようとする法人が株式会社である場合にあっては、株式の引受けの状況及び見込みを記載した書類

八 
個人にあっては、次に掲げる書類
イ 資産目録
ロ 戸籍抄本
ハ 履歴書
九 法第五条各号のいずれにも該当しない旨を証する書類

 

このように、一般貨物(特定貨物)の許可の申請は、既存の法人はもちろん、設立前の法人(ただし、設立する予定である会社が株式会社の場合は公証人による定款の認証はすでに受けている必要があります)個人事業主も行うことができます。

 



Q10.これから株式会社を設立して、一般貨物の許可を申請する予定ですが、株式会社を設立するにあたり、注意しておいた方がよいことはありますか?

 



 

A10.一般貨物の許可を申請するという点からのアドバイスとしましては、定款の「目的」に「一般貨物自動車運送事業」を入れておくこと、「 取締役」に運送事業に専従する人で、法令試験を受ける人を入れておくことをおすすめします。

 



 

会社で一般貨物(特定貨物)自動車運送事業の許可申請をするときは、添付書類として会社の登記簿謄本履歴事項全部証明書など)と最新の定款のコピーを提出して、審査を受けることになります。

 

「登記簿謄本」というのは、会社の名称(これを「商号」といいます)、住所(これを「本店」といいます)、役員の名前、資本金の額など、会社の重要な情報が記載された、法務局が発行する証明書のことです。

 

全国の法務局(及び支局・出張所)であれば、どこでもまたどなたでも取得することができます(交付手数料は1通600円で、法務局内にある印紙売り場で600円分の収入印紙を購入して、収入印紙で納めます)。

 

一般貨物(特定貨物)自動車運送事業の許可申請用に取得するときは、「履歴事項全部証明書」を取得していただければ、間違いありません。

 

定款」というのは、登記簿謄本に記載された情報より、もっと細かく会社の決まりごとが書いてある書類です。

 

定款は、法務局では取得できません(ただし、過去5年以内に設立登記その他の登記を法務局に申請したことがあり、そのときに定款を添付していれば、その閲覧(コピーは不可。その場で写真撮影をすることは可)は、申請した法務局であればできるかもしれません)。

 

株式会社であれば、設立時に作成し、公証役場で公証人の認証を受けた定款(又はそのコピー)か、その後株主総会の決議によって変更された定款が社内にあると思いますので、これらのうち最新のものをコピーして(原本証明をして)運輸支局に提出します。

 

ところで、この定款の中には「目的」という項目が必ずあります(定款の規定の中で、はじめの方にあります)。

 

「目的」には会社が現に行っている事業及び今後行う可能性のある事業を記載しますが、ここに「一般貨物自動車運送事業」又は「特定貨物自動車運送事業」を入れておくことをおすすめします。

 

設立時に入れておかなくても、設立後に追加することができるのですが、その場合は目的の変更登記が必要になってしまい、余計なお金と手間がかかってしまいます(目的変更登記の登録免許税は3万円です)。

 

したがって設立登記の時点で入れておくことをおすすめします。

 

次に「 取締役一般貨物(特定貨物)自動車運送事業に専従する常勤の方を入れておくことをおすすめします。

 

一般貨物(特定貨物)自動車運送事業の許可を受けるためには、一般貨物(特定貨物)自動車運送事業に専従する取締役が法令試験を受験し、合格しなければならないことになっています(法令試験についてはこちら➡一般貨物Q&Aその5.法令試験とは)。

 

「目的」と同様、こちらも設立後に追加することができるのですが、その場合は役員の変更登記が必要になってしまい、余計なお金と手間がかかってしまいます(役員変更登記の登録免許税は資本金が1億円以下の会社であれば1万円です)。

 

したがって設立登記の時点で入れておくことをおすすめします。

 



Q11.定款を紛失してしまいました。どうすればよいですか?

 



 

A11.株主の全議決権のうち、3分の2以上(有限会社であれば、全株主の半数以上且つ全株主の議決権の4分の3以上)の賛成を得られるのであれば、株主総会で定款変更の承認決議をして新しい定款に改定する方法があります。

 



 

定款が会社にない場合、株式会社又は有限会社であれば、定款を認証した公証役場に設立時の定款(設立時の定款のことを原始定款といいます)の謄本の再発行を請求して原始定款を手に入れることができる可能性があります。

 

しかし、原始定款は会社設立時点の定款ですので、その後に定款変更をしていた場合、変更した内容等は当然反映されておりません。

 

もし定款の変更手続きを司法書士や行政書士に依頼していたのであれば、依頼先に当時の定款のコピーが残っていると思いますので、問合せれば入手できる可能性があります。

 

ただ、以上のような方法で解決することが難しい場合は、新しい定款を作り直すことになります。

 

株主の議決権の3分の2以上(有限会社の場合は総株主の頭数半数以上且つ総株主の議決権の4分の3以上の賛成を得られるのであれば、株主総会の決議によって定款を変更することができますので、これにより新しい定款に変更できます(厳密には株式会社であれば定足数の3分の2で足りますが、少しややこしくなりますのでここでは「議決権の3分の2以上」と説明しています)。

 

新しい定款はご自分で作成してももちろんよいですが、少なくとも会社の登記簿の記載と矛盾が生じないように作成する必要があります。

 

ご面倒であれば、会社法に精通している行政書士などの専門家に作成を依頼することもできます。

 


定款変更をするための手続についての参考条文


1.株式会社の場合  議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ

              出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数

 

株主総会に出席しなければならない株主の数も、定款を変更する決議をするために必要となる、賛成株主の数も、どちらも株主の「人数」ではなく、「議決権の数」で判定します。

 

会社法第309条
 
(株主総会の決議)
 
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
 
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一 第百四十条第二項及び第五項の株主総会
二 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
三 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会
四 第百八十条第二項の株主総会
五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会
六 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会
七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)
八 第四百二十五条第一項の株主総会
九 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。
ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
十 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
十二 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
 
3 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
二 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)
三 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)
 
4 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
 
5 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。

 

会社法

第六章 定款の変更
 
第466条 株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。

 


 
2.有限会社の場合 ➡ 総株主の頭数の半数以上 かつ 総株主の議決権の4分の3以上に当たる多数

 

有限会社の場合は、株式会社と異なり、株主総会に出席しなければならない株主の数に、制限がありません。

 

ただし、定款を変更する決議をするために必要となる、賛成株主の数が、まず全株主の「人数の半数以上」でなければならず、さらに全株主の「議決権の4分の3以上」でなければなりません。

 

賛成株主の数が、全株主の「人数の半数以上」である必要があるということは、たとえば、有限会社の株主構成が、

 

Aさん  : 75株保有

Bさん  :  5株保有

Cさん  :  5株保有

Dさん  :  5株保有

Eさん  :  5株保有

発行株式数:100株(ただし、1株1議決権とする)

 

の場合で考えますと、全株主の議決権数が100個ですので、「全株主の議決権の4分の3以上」とは「75個以上」となります。

 

Aさんはひとりで75個の議決権を保有していますので、Aさんが賛成すれば「全株主の議決権の4分の3以上」の要件を満たします。

 

しかし、「全株主の人数」が5名ですので、「全株主の人数の半数以上」は「3名以上」ということになります。

 

つまり、Aさんが賛成しても、残り4名の株主のうち2名以上が賛成しなければ3名以上の賛成とはなりませんので、定款の変更の決議は「否決」となります。

 

このように、有限会社の定款変更は株式会社の定款変更よりも、要件が厳しいものになっております。

 

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第14条 
 
(株主総会に関する特則)
 
特例有限会社の総株主の議決権の十分の一以上を有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
 
2 次に掲げる場合には、前項本文の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 前項本文の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 前項本文の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
 
3 特例有限会社の株主総会の決議については、会社法第三百九条第二項中「当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二」とあるのは、「総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の四分の三」とする。
 
4 特例有限会社は、会社法第百八条第一項第三号に掲げる事項についての定めがある種類の株式に関し、その株式を有する株主が総株主の議決権の十分の一以上を有する株主の権利の行使についての規定の全部又は一部の適用については議決権を有しないものとする旨を定款で定めることができる。
 
5 特例有限会社については、会社法第二百九十七条及び第三百一条から第三百七条までの規定は、適用しない。

 


3.持分会社の場合 ➡ 総社員の同意

 

会社法第637条
 
(定款の変更)
 
持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。
 

持分会社(合名会社、合資会社、合同会社のことです)の場合は、原則として総社員の同意となっております。

 

ここでいう「社員」とは、会社の役員や従業員のことではなく出資者のことで、株式会社や有限会社でいうところの「株主」がこれにあたります。

 

定款を変更するには「社員全員の同意」が必要ということで、有限会社よりもさらに要件が厳しくなっております。

 


 

 

個人事業主であっても会社と同じように一般貨物(特定貨物)の許可を受けることができる。

 

新たに株式会社を設立して一般貨物(特定貨物)の許可を受けようと考えている場合は、「事業目的」と「取締役」に注意する。

 

 

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