「 一般貨物Q&A」は、運送業に関する様々なテーマをピックアップして、知識や情報を提供することを目的としたページです。
これから開業しようとお考えの方が本ページを読んで、運送業に関する知識を習得していただければ、幸いです。
Q9.会社でなければ、許可は受けられないというのは本当ですか?
A9.いいえ、個人事業主であっても、許可は受けられます。
一般貨物(特定貨物)自動車運送事業は「個人事業」でも会社と同じように許可を受けられます。
なお、会社は設立の登記によって誕生しますが、この設立の登記をする前であっても、許可の申請をすることは可能とされています。
許可の申請者に関する参考条文
(添付書類)
法第4条第3項の国土交通省令で定める事項を記載した書類は、次のとおりとする。
六 既存の法人にあっては、次に掲げる書類
八 個人にあっては、次に掲げる書類
このように、一般貨物(特定貨物)の許可の申請は、既存の法人はもちろん、設立前の法人(ただし、設立する予定である会社が株式会社の場合は公証人による定款の認証はすでに受けている必要があります)や個人事業主も行うことができます。
Q10.これから株式会社を設立して、一般貨物の許可を申請する予定ですが、株式会社を設立するにあたり、注意しておいた方がよいことはありますか?
A10.一般貨物の許可を申請するという点からのアドバイスとしましては、定款の「目的」に「一般貨物自動車運送事業」を入れておくこと、「 取締役」に運送事業に専従する人で、法令試験を受ける人を入れておくことをおすすめします。
会社で一般貨物(特定貨物)自動車運送事業の許可申請をするときは、添付書類として会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書など)と最新の定款のコピーを提出して、審査を受けることになります。
「登記簿謄本」というのは、会社の名称(これを「商号」といいます)、住所(これを「本店」といいます)、役員の名前、資本金の額など、会社の重要な情報が記載された、法務局が発行する証明書のことです。
全国の法務局(及び支局・出張所)であれば、どこでもまたどなたでも取得することができます(交付手数料は1通600円で、法務局内にある印紙売り場で600円分の収入印紙を購入して、収入印紙で納めます)。
一般貨物(特定貨物)自動車運送事業の許可申請用に取得するときは、「履歴事項全部証明書」を取得していただければ、間違いありません。
「定款」というのは、登記簿謄本に記載された情報より、もっと細かく会社の決まりごとが書いてある書類です。
「定款」は、法務局では取得できません(ただし、過去5年以内に設立登記その他の登記を法務局に申請したことがあり、そのときに定款を添付していれば、その閲覧(コピーは不可。その場で写真撮影をすることは可)は、申請した法務局であればできるかもしれません)。
株式会社であれば、設立時に作成し、公証役場で公証人の認証を受けた定款(又はそのコピー)か、その後株主総会の決議によって変更された定款が社内にあると思いますので、これらのうち最新のものをコピーして(原本証明をして)運輸支局に提出します。
ところで、この定款の中には「目的」という項目が必ずあります(定款の規定の中で、はじめの方にあります)。
「目的」には会社が現に行っている事業及び今後行う可能性のある事業を記載しますが、ここに「一般貨物自動車運送事業」又は「特定貨物自動車運送事業」を入れておくことをおすすめします。
設立時に入れておかなくても、設立後に追加することができるのですが、その場合は目的の変更登記が必要になってしまい、余計なお金と手間がかかってしまいます(目的変更登記の登録免許税は3万円です)。
したがって設立登記の時点で入れておくことをおすすめします。
次に「 取締役」に、一般貨物(特定貨物)自動車運送事業に専従する常勤の方を入れておくことをおすすめします。
一般貨物(特定貨物)自動車運送事業の許可を受けるためには、一般貨物(特定貨物)自動車運送事業に専従する取締役が法令試験を受験し、合格しなければならないことになっています(法令試験についてはこちら➡一般貨物Q&Aその5.法令試験とは)。
「目的」と同様、こちらも設立後に追加することができるのですが、その場合は役員の変更登記が必要になってしまい、余計なお金と手間がかかってしまいます(役員変更登記の登録免許税は資本金が1億円以下の会社であれば1万円です)。
したがって設立登記の時点で入れておくことをおすすめします。
Q11.定款を紛失してしまいました。どうすればよいですか?
A11.株主の全議決権のうち、3分の2以上(有限会社であれば、全株主の半数以上且つ全株主の議決権の4分の3以上)の賛成を得られるのであれば、株主総会で定款変更の承認決議をして新しい定款に改定する方法があります。
定款が会社にない場合、株式会社又は有限会社であれば、定款を認証した公証役場に設立時の定款(設立時の定款のことを原始定款といいます)の謄本の再発行を請求して原始定款を手に入れることができる可能性があります。
しかし、原始定款は会社設立時点の定款ですので、その後に定款変更をしていた場合、変更した内容等は当然反映されておりません。
もし定款の変更手続きを司法書士や行政書士に依頼していたのであれば、依頼先に当時の定款のコピーが残っていると思いますので、問合せれば入手できる可能性があります。
ただ、以上のような方法で解決することが難しい場合は、新しい定款を作り直すことになります。
株主の議決権の3分の2以上(有限会社の場合は総株主の頭数半数以上且つ総株主の議決権の4分の3以上)の賛成を得られるのであれば、株主総会の決議によって定款を変更することができますので、これにより新しい定款に変更できます(厳密には株式会社であれば定足数の3分の2で足りますが、少しややこしくなりますのでここでは「議決権の3分の2以上」と説明しています)。
新しい定款はご自分で作成してももちろんよいですが、少なくとも会社の登記簿の記載と矛盾が生じないように作成する必要があります。
ご面倒であれば、会社法に精通している行政書士などの専門家に作成を依頼することもできます。
定款変更をするための手続についての参考条文
1.株式会社の場合 ➡ 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ
出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数
株主総会に出席しなければならない株主の数も、定款を変更する決議をするために必要となる、賛成株主の数も、どちらも株主の「人数」ではなく、「議決権の数」で判定します。
第六章 定款の変更
有限会社の場合は、株式会社と異なり、株主総会に出席しなければならない株主の数に、制限がありません。
ただし、定款を変更する決議をするために必要となる、賛成株主の数が、まず全株主の「人数の半数以上」でなければならず、さらに全株主の「議決権の4分の3以上」でなければなりません。
賛成株主の数が、全株主の「人数の半数以上」である必要があるということは、たとえば、有限会社の株主構成が、
Aさん : 75株保有
Bさん : 5株保有
Cさん : 5株保有
Dさん : 5株保有
Eさん : 5株保有
発行株式数:100株(ただし、1株1議決権とする)
の場合で考えますと、全株主の議決権数が100個ですので、「全株主の議決権の4分の3以上」とは「75個以上」となります。
Aさんはひとりで75個の議決権を保有していますので、Aさんが賛成すれば「全株主の議決権の4分の3以上」の要件を満たします。
しかし、「全株主の人数」が5名ですので、「全株主の人数の半数以上」は「3名以上」ということになります。
つまり、Aさんが賛成しても、残り4名の株主のうち2名以上が賛成しなければ3名以上の賛成とはなりませんので、定款の変更の決議は「否決」となります。
このように、有限会社の定款変更は株式会社の定款変更よりも、要件が厳しいものになっております。
3.持分会社の場合 ➡ 総社員の同意
持分会社(合名会社、合資会社、合同会社のことです)の場合は、原則として総社員の同意となっております。
ここでいう「社員」とは、会社の役員や従業員のことではなく出資者のことで、株式会社や有限会社でいうところの「株主」がこれにあたります。
定款を変更するには「社員全員の同意」が必要ということで、有限会社よりもさらに要件が厳しくなっております。
☑新たに株式会社を設立して一般貨物(特定貨物)の許可を受けようと考えている場合は、「事業目的」と「取締役」に注意する。
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